三菱地所ホーム

 

 

 
 

第6話新・エアロテック-UV

空気を循環させる全館空調というのは、あまり聞いたことがない。しかも各部屋ごとの室温管理が可能なのだ。そういうことは前回のエッセイに書いた。エアロテックという空調システムは、わたしの理解を超えている。ところで、どうしてエアロテックを導入したかということは書いていなかった。実は、それがいかに快適で、いかに素晴らしいかということを、わたしは知らなかった。

すべて妻がやったのだ。2009年に新居はできたので、妻が三菱地所ホームのM氏と会っていたのは2008年だった。最初に、なぜ三菱地所ホームを選んだのか、妻に聞いてみた。「あまりよくおぼえていないんだけど」と、前置きしてから、たまプラーザにハウジングセンターがあって、そこに夕方の5時ごろに、ふらっと行ってみたと言った。他は閉まっていて、三菱地所ホームの担当者だけが、自車を洗っていて、「時間、遅いですけど、いいですか」と聞いたら「いいですよ」とカギを開けて、中に入れてくれたのだそうだ。

名刺には「営業」という文字があり、M氏は、椅子を勧めてくれて、話を聞くうちに、家の設計図まで描きはじめたらしい。設計図を描くのが好きなのだった。当時、M氏は一介の営業だったが、今は出世して執行役員になっている。この人は出世するだろうなとわたしはそう思っていた。営業の鉄則である「売ろうと思わずに顧客に寄り添う」ということをごく自然に実行していたからだ。

最初の出会いでは、エアロテックの紹介はなかったのだそうだ。夕方だったし、日を改めないとその良さがわからないとM氏は思ったのだろう。しばらくして電話がかかってきた。「エアロテックという空調システムの説明会がありますので、いらっしゃいませんか」ということだった。妻は出かけていった。そこで妻は、実際にエアロテックの家に住んでいる人の話をうかがい、これは素晴らしいと思った。

わたしは、まだ新居の話にも、エアロテックの話題にも登場しない。2008年の12月に地鎮祭が行われたが、それには参加した。何というか、極端な面倒くさがりで、新居のことなどに関わる余裕がないのだった。新居の設計図も見なかった。興味がなかったわけではない。ただ単に面倒くさかっただけだ。

2009年になって、M氏、それに設計者、そしてさまざまな問題を解決してくれた三菱地所ホームの女性社員の3名を、わたしの箱根の別荘に招待することになった。どうして招待することになったのか、わからない。おそらく妻と息子が計画したのだろう。あるいはわたしが、つい3名のみなさんにはお世話になっているので招待したいと適当に言ってしまったのかもしれない。わたしは、M氏はもちろんのこと、他の2名も気に入っていたが、箱根に来ていただくことは気が重かった。

別荘は、プライベートな場所なので、他人を招いたりするのは好きではないというのがわたしの持論だった。勝手な持論だが、これも、単に面倒なだけで、他人に気を遣うのがいやだったのだ。3名を招待した日、わたしは朝から機嫌が悪かった。午後、いつものように息子とテニスに行った。わたしは当時60歳になる前で、息子は30歳になる前だった。テニスは、まったく敵わなくなっていた。シングルスを2セットやり、0-6、0-6という屈辱的なスコアで負けた。わたしの不機嫌さは頂点に達していた。どうしてそんなに不機嫌なの? と息子が聞いてきた。

「テニスに負けたことと、今夜、Mさんたちが来るだろう、だからだ」
「Mさんが来るのがいやなのか。それはどうして?」
「だって別荘というのはプライベートなところだろう。そこに他人が来ると、気を遣うじゃないか」
 みたいな会話のあと、あのさ、と息子は言った。
「人生で家を建てるってことは、何回もあることじゃないだろう」
 わたしは頷いた。確かに何回もあることじゃない。
「その、家を建てるってことに、Mさんをはじめ、みんな労力を払ってくれてるわけだろう。だったら、一晩くらい、いっしょに、ワインでも飲んで、おいしいものを食べてもらって、気持ちよく帰ってもらうべきじゃないのかな」

そうやって、新居は完成した。エアロテックはすごかった。こんなに快適でいいのだろうかと思った。

それで、今年、エアロテックは進化したらしい。、医療機器メーカー大手・日機装株式会社が開発した「深紫外線LED」を搭載した「新・エアロテック-UV」を発売したのだ。ウイルスを除去できるという。ウイルスは目に見えないので、実際に除去できているのかはわからない。ただ、実感として、室内機から出る空気がきれいになった気がする。エアロテックのすごさを実感するたびに、M氏のことを考える。付き合いはもちろん今も続いている。何かをうりつけようとせず、こちらのことを考えてくれるのは、相変わらずだ。2008年のある夕方、妻がM氏に会っていなかったら、我が家にエアロテックはない。きれいな空気は、人との出会いによって生まれたのだ。