機能にはいろいろある。気分が高揚することもそのひとつ

イタリアンデザインのクオリティの高さは周知されている。だからこそ、心してそれを受け止め、その洗練性に似つかわしい人物であらねばならぬと構えてしまうことはないだろうか。その点について尾藤氏に尋ねるとこんな言葉が返ってきた。「結局のところ工業デザインですので、身近なところでいえば車を買うのに似ていると思うんです。イタリア車が好きか、ドイツ車が好きか、日本車が好きか。国によって特徴がありますよね。まずはそれくらいざっくりとした視点で家具やキッチンを選ばれるのがいいと思います」。
その上で、イタリアンデザイン──さらにはEuromobilの魅力について問う。「実はイタリアのデザインとは、個性を主張するというよりも、感性に訴えることを重んじているのです。Euromobilも、そのイタリアに息づいたデザイン文化を尊重しつつ、そこにオリジナリティを掛け合わせたスタイルでお届けしているメーカーです。主観ではありますが、インパクトのあるデザインは、経年のうちに飽きてしまう。それは耐久性がないのと同じ。その逆で、例えばそのデザイン故にキッチンに立つだけで気分が高揚したり、いつまでも慈しんで使いたくなるとすれば、それは一種の機能と言えるのではないでしょうか。“便利さ”や“簡単さ”の追求だけではなく、“感性に響く”ということは重要な機能だと思うのです」

家族と、友人と食卓を囲む。日本の食文化がもっと豊かになれば

哲学を頭に入れた上で改めてキッチンと向き合う。すると、一見して気づくことのできなかった丁寧で細やかな仕事の向こう側にある“想い”が見えてくる。「茶色」とひと言で片付けられない絶妙な色合い。すべてにおいてグレイッシュさを踏襲し、どんな空間にもすっと馴染む“遠慮”が施されている。なんとも紳士的な調和だ。

調和の美とは、シンプルの美よりワンランク上

だと考えています。『なんとなく心地よい』デザインというのは、一種の究極ではないでしょうか。ただ引き算するだけではなく、バランスに配慮し調和させる。これはとても難易度の高い技ですね。寛ぎと洗練をどう調和させるか、これを追求していくのがEuromobilなのです」。その豊かなキッチンで、どんな暮らしのシーンが生まれていくのだろう。そもそも日本人の感覚において、キッチンを家具として捉えることができるのだろうか。「イタリアの食文化では、家族や友人が一緒に料理をしたり、長い時間食卓を囲むということが日常です。これは日本にはない文化だと思います。とはいえ、人と人との絆やコミュニティが生まれるという意味では素晴らしいこと。日本は非常に便利なので、コンビニや外食でサッと済ませるというスタイルが多いかと思いますが、“共に食べること、語らうこと”という豊かな食文化が、このキッチンを機に生まれてくれたらうれしいですね」。なるほど、本物とは、実に奥深い哲学の上に成り立っているのだと改めて思わされる。キッチンが、私たちに豊かさとは何かを語りかけてくれるのかも知れない。

尾藤和宏

Kazuhiro Bito│尾藤和宏

関西学院大学卒業後、金融機関、FA関連機器メーカーでの経歴を経て、2009年にEuromobil正規ディーラーである株式会社藤屋に就職。2019年6月、代表取締役に就任。イタリア製キッチンを通じ、日本人の感性に響く豊かさと食文化の豊かさを伝えていく。

Euromobilオフィシャルサイト 
http://euromobil.jp

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