学生時代から“建築と人の関係”に興味がありました。そのため、専攻していた学科も建築。大学院では、震災復興プロジェクトに取り組みました。このプロジェクトを通じて、建築業界の中でも人にもっとも寄り添うことのできるのは住宅であると確信。一生の仕事としてこれに携わっていきたいと感じるようになりました。
就職活動ではさまざまな企業を検討しましたが、その中で一つの軸としていたものが、“人を中心に考えられている会社であること”です。人と建築の関係に興味を持ち続け、寄り添い合うその関係に魅力を感じて志望業界を決めた自分としては、ごく自然なことだったのかもしれません。その中で見つけた企業こそ、三菱地所ホームでした。家づくりのプロセスそのものを大切にし、お客さまとじっくり対話を重ねながらつくられる一邸ごとの“完全フルオーダー制"。住む人のことを考えて開発された全館冷暖房換気システムの“エアロテック”。どれも、私が思い描いていた人を中心にしている会社そのものでした。そのため、内定をいただいた時は迷わず入社を決めた記憶があります。

現在は、新築注文住宅の設計に携わっています。業務のスタートは、お客さまに住まいの夢やご要望をお伺いすることから。伺った内容を検討し、具体的な間取りへと落とし込んでいきます。同時に、敷地の条件を確認することも欠かせません。敷地の特徴によって異なるさまざまな制約をクリアし、お打合せを重ねながら理想の住まいをつくりあげていくことも醍醐味の1つです。着工が近づいてくると、今度は図面のチェックや工事関係者との会議をおこない、図面に漏れがないか施工上で心配な部分がないかなどの検討を重ねます。その後、工事がスタートすると現場へ赴き、建物が正確につくられているかを確認する検査に立ち会います。ホームコンサルタントやプロダクトマネージャーと協力しながら工事を進め、完成後、お客さまへ住まいをお引渡しします。
どれもやりがいに溢れた仕事ですが、中でも多くの喜びを経験できるのは人との出会いです。一つのお住まいがつくられる過程には、大勢の人が関わります。アドバイスをいただくことも多く、仕事を超えた経験をたくさんさせていただいています。時には仕事以外でお食事をご一緒することもあるんですよ。

お客さまの敷地条件により、ご契約後に追加費用が発生してしまったことがあります。ご契約後の敷地調査結果が出るまで分からない内容であったため事前に口頭でアナウンスはしていましたが、文書では残しておらず、そのためお客さまは追加費用がかかることを忘れてしまっていました。さらに、想定よりも大きな額であったため、お客さまをとても困らせてしまいました。最終的には社内外のたくさんの人の手を借りて問題を解決することができ、お客さまにも丁寧にご説明し、ご納得いただくことができましたが、あの眠れない日々に感じた胃の痛みは、いまでもはっきりと覚えています。
苦い経験となりましたが、そこから学ぶことも大いにありました。例えば“お客さまの目線に立つ”ことの大切さも、その一つです。私がお伝えしたつもりでも、お客さまには正確に伝わっていない可能性があります。だからこそ、お客さまの気持ちを想定し、十分な準備と伝え方の工夫が不可欠です。決して一人でやり遂げることができないこの仕事だからこそ、これからも周囲への感謝を忘れずに歩んでいきたいと思います。